もぐもぐと独逸

ならでは食と独逸物語。

コロナ渦のあるトラットリアについてー遙かなるカプチーノとフルフトゥディマーレ

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よく行く店に、南イタリアの料理を出すイタリアンレストランがある。

 

シチリアのメニューを出しているエスプレッソバー兼トラットリアで、カプチーノが抜群においしく、贔屓にする人たちも多い。

 

コーヒーのほかにワインや食事、デザートや茶菓子もあって、どれをとってもハズレがない。

 

海鮮パスタのフルフトゥディマーレはイチオシの品で、あっさりしているのに深い旨味があって本当においしい。その日によって具材の具合も変わり、海老の多い日もあれば、ムール貝の入っている日もある。鮭ばかりの日もあれば、鱈が入っているときもある。この均一性のなさが宝くじみたいで楽しい。

 

通い始めて何度目だっただろうか。ある日、店長が話しかけてきた。

 

「この店好きか」

 

だんな氏が「カプチーノの味が他とは違うんだ」と答えた。カプチーノは店の人たちの腕の見せ所。ミルクをきめ細かく泡立てる技とコーヒーの淹れ方で、同じ豆を使っていても味がまったく変わってくる。夫の言葉を聞いて店長が微笑した。常連客の仲間入りができたのは、この時だったと思う。以来、家族の誕生日にはパスタを特別に増量してくれるし、ちびっこに店内を自由に歩き回らせてくれるし、ほかの常連さんにも紹介してくれるようになった。 

 

一度目のロックダウンの後にはすぐに常連客が戻ってきてせっかく日常に戻りかけていたのに、この11月から、また店を閉めなければいけなくなった。コロナ禍でロックダウンが段階的に始まると、飲食店は一番乗りで店を閉めなければいけない。他店はテイクアウトや配達サービスに切り替えているのに、この店は徹底していて、ロックダウン時には普段からしている持ち帰りもお休みしてしまい、いつも完全に店を閉めてしまう。行政の支援金もあるので店がなくなることはないだろうけれど、長い間カプチーノが飲めなくなるのはさみしい。ロックダウンが長引いても、支援金は保つだろうか。

 

段階的ロックダウン直前の10月末、フルフトゥディマーレを食べに出かけた。毎回微妙に味の違う、でもいつも通りの味。舌鼓を打ち、カプチーノを飲み、会計を終えて店を出る時、店の人たちに声を掛けた。

 

"Alles Gute und Bleiben Sie gesund!!"

 

店員さんはほかの客も返してくれた。

 

"Alles Gute!! Bleiben Sie gesund"

 

アレスグーテ!どうかすべてうまくいきますように。ブライベンジィゲズント!どうか健康で。

 

店の人たちもお客さんも、無事にコロナ禍を乗り切れますように。こみあげてくるものがあった。