もぐもぐと独逸

ならでは食と独逸物語。

002 ポルトガル美食記 before coronaー無計画な旅支度

無計画な旅支度ー期待と不安

長期休暇の前日になると、仕事も終わらないうちからソワソワとして、昼過ぎには鼻歌を歌いながら帰ってしまう。ここドイツでは、そんな人を何度か目にしたことがある。ウアラウブ(Urlaub)と呼ばれる休暇って、人々にはとても大切。

 

ドイツで働くナツさんにとってもそうらしかった。時は、コロナが流行りだす前の年の初夏、彼はポルトガルに行きたいと言い出し、計画を立て、出発の前日には、頭の上にはしじゅう音符が舞っていた。その横で私は不穏な空気を感じて不安を抱いた。

 

結婚前に、ドイツのどこに住むのかを決めるため、候補地をいくつかまわったことがある。結果的に、ドイツ滞在日数より訪問都市の数のほうが上回ったことは記憶に新しい。どろどろになって日本に帰り、休み明けも体力と体調が戻らず、職場で蟻地獄のように睡魔が襲ってきたことを覚えている。今回はどうなのだろう。ナツさんのプランニングについていけるだろうか。ポルトガルには行きたい。でも小さい子を連れて大丈夫なのだろうか。

 

リスボンの美しい街並みや新鮮な魚介類に期待を膨らませるナツさんと、ナツさんのプランニングに一抹とはいえないほど大きな不安を感じる私。この差は大きい。旅の前日にもその温度差はありありと見えた。ナツさんがいらいらする。

 

「ガイドブックくらい読んだらどうなの。」

 

 私はケープをまとい授乳しながら反論する。

「それより、小さい子がいるんだから、プランには余裕を持たせようよ。」

 

私たち夫婦には、小さな男の子がいる。子どもがいても 四泊五日という短い期間でどうすればたっぷり楽しめるか考えをめぐらせるナツさんと、四泊五日という長い期間を、小さな子を抱えてどうすればゆったりと過ごせるか考えている私の間には、深い深い溝があり、前提が違うために話がかみ合わない。が、まだミルク離れしていないコナツがいるという事実に、今回はナツさんが折れた。

 

「まあ、そうだね。コナツがいるんだから、今回はゆっくり旅をしよう。」

 

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こうして、私たちは次の日の朝9時ごろ自宅を出た。コナツはまだ小さいから、ベビーカーは持っていくことにした。ポルトガルについては、電子版ガイドブックをスマホに入れたものの、ホテルへの行き方や気温など最低限のこと以外、たとえばどこの店が美味しいとか、どこを観光するとか、ろくに下調べをしないまま飛行機に搭乗した。飛行機がポルトガルに着いたのは、午後3時ごろのことだった。