もぐもぐと独逸

ならでは食と独逸物語。

潤い苺の下で頑張っている。

今週のお題「大人になったなと感じるとき」

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このピザで一番華やかなのは、苺じゃないだろうか。まるでリップグロスみたいに艶があってとても綺麗。

 

以前にいた街の自宅近くのカフェレストランは、夜遅くまで営業していた。子どもを寝かしつけたあと、一人になりたいときに夜カフェに行ったことがある。店が閉まる直前になるとキッチンのシェフが出てきて、甘いピザを配ってくれた。閉店時間は午後11時。たいてい10時半ごろになると無料で配られるのだそう。こういう店、素敵。

 

具材はその日によって違う。洋ナシのときもあるしブルーベリーのときもあるそうだ。この夜はピザ生地の上にカスタードクリームと苺が乗せられていた。チョコレートソースが、細く美しくかかっている。

 

ふっくらした女性のシェフが「あなたもいる?」とにこやかに声をかけてきてピザケーキを八等分に切りわけ、ペーパーナプキンに取ってくれた。

 

新鮮な苺の酸味、チョコレートソースのわずかな甘さ、ピザ生地の小麦の深味。救われた思いがした。ドイツの「粉もん」てどうしてこんなに美味しいんだろう。硬水がビールを美味しくさせるのだと聞いたことがある。ドイツの気候と水が小麦を美味しくするんだろうな。甘いものを食べれば疲れが癒される。でも、この小麦の生地があってこそ、美味しい。

 

小さい赤ちゃんがずっと泣きやまないので、イライラしていた。その苛立ちに対する罪悪感が、「ママ失格! もっとよいママにならなきゃ」と叫んでいた。苛立ちを糾弾している罪悪感をじっと見る。続けて苛立ちに視線を移す。

 

―そのままの私はどちらか。

 

答えの分かりきった疑問が浮かんだ。苛立っている自分が、そのままの自分だ。

  

大人になったと感じたのは、このときだったと思う。いろんな本を読んだ。アンガーマネジメントの本、子育ての心構え。どれも参考になったけど、読んでも身に着いた感覚はなかった。

 

―今のいま私は自分の感情を見つめることを、体で覚え始めている。

 

そう感じた。我慢するんじゃないんだ。自分のイライラと向き合うというのとも少し違う。苛立ちを、ただじっと見る。

 

自分の気持ちを見つめようと、夜中にピザケーキを食べている。食材を余らせないための、無償の好意で作られた特別な裏メニュー。

 

睡眠不足で自分の時間もない。そんな子育てで、イライラする自分を責めることはない。それを行動に移さないことのほうが大事。子どもは今すこし大きくなったけれど、イヤイヤをしたときも、きっと同じだと思う。イヤイヤしてる感情を否定することはない。「あなたはそう感じたんだね」といってあげたらいい。理想のママ像に、無理に心まで合わせようとすることはない。

 

煌めく苺の下でピザ生地だって頑張っている。