心躍るもの。それは道沿いにあるスタンドで、農家の人から直接買う春のホワイトアスパラである。白く輝く春の宝石。
夫氏は、4月に入るとそわそわしだした。畑の広がる田舎に住んでいるということは、直売所で買えるということであり、それは春の何よりの贅沢だからだ。
ホワイトアスパラは苦手な食べ物だったのに、ドイツに来てからは大好きになった。えぐみがなくて、素直な味がする。
ドイツには、このアスパラガスをゆでるための「シュパーゲル・トプフ」なるものがある。「シュパーゲル」とはアスパラ、「トプフ」とは鍋のことだ。そしてホワイトアスパラは、まさに今が旬。指二本分といえば大袈裟かもしれないけれど、それぐらい図太い、どっしりとした、長いホワイトアスパラがスーパーにずらりと並ぶ。それをゆでるための鍋が「シュパーゲル・トプフ」である。先日、ホワイトアスパラの旬の時期を迎えるにあたり、ドラッグストアのポイントを使って、いそいそと手に入れた。
お店で買ってももちろん美味しいけれど、何と言ってもおすすめは、採れたてのホワイトアスパラを直売所で買うこと! ファーストクラスがいちばんお高く、500グラムで6ユーロする。セカンドクラスはほどほど。ファーストクラスもセカンドクラスも、味にそれほど違いはないよ、と農家の人が教えてくれた。いちばん下のクラスは2キロで2ユーロ。この安価なものはスープを作るときに使うのだとか。
どのクラスのを買っても長さがあるので、縦長のお鍋はゆでるのに重宝する。近所のドラッグストアのポイントがたっぷりたまって手にいれたWMFの細長い鍋。ふつうの丸い鍋だと長さが足りず、重宝している。
そうしてゆでたホワイトアスパラは、かすかに苦いけれど、えぐみはない。まったく癖のない、この白く輝く野菜は、食べだすと止まらなくなる。これほど巨大なものは、日本で一度も食べたことはない。(そもそもドイツでは茄子なんかも日本の茄子とはくらべものにならないくらい大きいけれど。) ソースはバター、卵、檸檬からなるオランデーゼソースが王道。かなりこってりとしている。
我が家のおすすめは、ゆでたてのホワイトアスパラにオリーブオイルと塩と檸檬汁をかけたシンプルなもの。最近はこれにゆでた海老、パプリカのスライス、ネギと一緒に食べている。お店で食べるよりも、金曜日に直売所で買って、自宅で食べるオリーブオイルと塩のホワイトアスパラを食べる贅沢のほうが、私には印象が鮮烈。春のドイツに観光で来る方がいたら、アパートメントホテルをとって、直売所で購入し、ゆでて食すのもよいと思う。
シュパーゲル・トプフを手に入れたことに後悔はないけれど、ドラッグストアのポイントを使ってしまったことには後悔した。夫氏が同僚にシュパーゲル・トプフのことを話したら、「なんだ、わざわざ新品を買わなくても、うちに使ってないのがあるから言ってくれたらあげたのに。」だって。