ほっぺたの向こう

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ポルトガルで食べる小悪魔的魅力! 絶品、貝の酒蒸しを引き立てたのは誰だ。

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以前、夏の休暇にポルトガルを旅したとき、二枚貝のワイン蒸しを食べたが、今でも忘れられないほど衝撃的に豊かな味だった。海の味が凝縮されているだけじゃない。なんとも言えない酸味と清涼感があったのだ。

 

酸味を引き出していたのはレモン、清涼感を出していたのはコリアンダーである。コリアンダーは、意外だった。独自の香りがするし、スーパーで見かけてもなかなかメニューを思いつかない。あつかいのむずかしいハーブ。けれど貝の酒蒸しをするときに使うと、あんなにも名脇役になるのだ。

 

旅から帰って、ムール貝の酒蒸しをしてみたとき、ふとコリアンダーを入れてみた。やっぱりとても美味しかった。日本のあさりでもやってみたいけれど、まだ試せていない。コリアンダーの独自の香りとレモンの酸っぱさが、こんなに貝の味を引き立てるとは思わなかったので、今度から貝を食べるときには、ぜひ試してみたい組み合わせ。日本酒には合わないだろうから、白ワインで。

 

ところで、このポルトガルの料理を食べるまで、コリアンダーがパクチーだということを知らなかった。周囲には、独自の香りが苦手だという人もいるし、私ももともとは好きじゃなかった。

 

ところが、ポルトガル旅の非日常にテンションがマックスになっていたところに、写真の二枚貝の蒸し煮が出てきたのである。黄色いレモンと、謎の緑色の香草が、美しさを讃えて。

 

口に運ぶと、箸がすすむ、すすむ。(正確に言えば、フォークがすすむ)

 

「この香草で、貝がぐっと美味しくなっている気がする。」

 

わかったようなことを言いながら、上機嫌で貝の身をほじり、頬ばっていた。そう、まったくわかっていなかった。私を見て、だんな氏が貝殻に残った香草に目をやりふたたび私を見つめてにやりと笑う。

 

「コリアンダーだよ。パクチーさ。苦手だって言ってなかった?」

 

数秒間、動きが止まる。知らないうちに苦手を克服していたらしい。普段どんなに好きでないと思っていても、克服するときは、あっけない。正体がわかっても、やっぱり美味しかった。

 

レモンとパクチーの小悪魔的魅力にほだされて、すっかり夢中になってしまった私。気づけば貝殻を盃に、パクチーの混じった透明な煮汁を飲み干し、食事のあいだ中「美味しい、美味しい」を連発していた。

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