もぐもぐと独逸

ならでは食と独逸物語。

チーズでないチーズ?レバーケーゼ Leberkäse(レバーチーズ)の正体を知る

ドイツのレストランで肉を頼むと、ボリューム満点でおなかがすぐにいっぱいになる。日本に野菜たっぷりランチなんてあるけれど、ドイツでは野菜は皿にちょっぴり添えられているだけだったり、皆無であったりすることも多い。よく添えてあるじゃがいもは、ドイツでは主食であり、「野菜」という感覚はない。メインの肉は、拡大鏡を通して眺めている気分になるほど大きく、サラダを別注してバランスをとろうとしても、そのサラダさえ、ボウルに山盛り出てくる。けっきょく私は食べきれないのだ。

 

だから、相方さんに「昼飯に週末マルクト(市場)でレバーケーゼ Leberkäseを食べよう」と言われたときには、ほっとしたのだった。ケーゼとは、日本語でチーズ。ドイツには薬草を混ぜこんだりドライフルーツを混ぜこんだりしたチーズが売られているので、似たようなものだろうと思った。レバーケーゼは食べたことがなかったけれど、てっきりレバーが混ぜこまれているチーズだと思ったのだ。市場で食べるならボリュームはレストランほどではないし、肉でないなら食べきれるだろう、と。パンにはさんで食べるというから、トマトやきゅうりも入っているかも! なんて淡い期待もあった。

 

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ところが、マルクト(市場)に出かけていき、精肉店の出店でレバーケーゼを注文すると、出てきたのはチーズではない。肝っ玉の太そうな女性が取り出したのは、どでかい肉のカタマリである。それを豪快に切って、パンにのせるのだ。また、ぶ厚い。こぼれんばかりである。そして、「マスタードはいる?」と聞かれる。私はマスタードなしをお願いしたけれど、相方さんはマスタードありを頼んだ。…チーズにマスタードなどつけない。お店のおばさんは、怪訝な顔で見つめる私を気にもとめず、相方さんのパンに黄色いマスタードペーストをたっぷりぬりつけて、巨大なカタマリのサンドイッチを作ってゆく。

 

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当然、パンから思い切りはみだすことになる。

 

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野菜はない。

 

想像していたものと違う。しばらく呆然としていて、我に返ったのは、相方さんに促されて謎の「チーズサンドイッチ」にかぶりついたときだった。

 

ぷりぷりで、きめの細かい、なめらかな舌ざわり。その姿かたちからは思いつかないほど、繊細で、みずみずしくて、奥深い味わい。精肉店の新鮮な肉だからか、レバー独自のくさみがない。名前に入ってなければ、これがレバーと気づかないかもしれない。

 

チーズの風味もまるでなかった。それもそのはず。後で調べてわかったのだけれど、このカタマリは、たんに形がチーズのようだからチーズと呼ばれているだけなのだそうだ。宇宙から降ってきた隕石かと思いたいくらいインパクトのあるカタマリだけれど、レバーチーズとは、チーズではなく巨大なソーセージだったのである。*1

 

これは、なかなか日本ではお目にかかれないスケールのサンドイッチである。食物繊維を取らねばと思いつつも、かぶりついたら、止まらない。買ってすぐ食べるのが、またいい。その輝く巨大なソーセージが、週末のマルクトに、週一回ほどの頻度でやってくるのだ。ぶ厚いレバーケーゼはひと切れ2.5ユーロ、パンは0.5ユーロほどで、計3ユーロほど。お得な贅沢。相方さんの好物である。

 

当初の予想を裏切り、おなかはすぐにいっぱいになって、私は半分も食べれなかった。満たされた気分とぱんぱんになったおなかで、残り半分をアルミに包み直して、いそいそとお持ち帰りしたのだった。