もぐもぐと独逸

ならでは食と独逸物語。

004 ポルトガル美食記 before coronaー鰯、鱈、蛸!

ベレンに行く前に

旅全体にいえるのは、とくに食についてよく調べないまま旅をすると、ときどき致命的な事態を招くということだ。リスボン名物のエッグタルト、パステル・デ・ナタの元祖を食べるべきだったと、今も悔やんでいる。ジェロニモス修道院の秘伝のレシピが伝わる名店「パステル・デ・ベレン」のエッグタルトである。ガイドブックにエッグタルトが美味しいと載っているのはちらりと見て知っていたのに。

 

リスボン市内のショッピングモールで抱っこ紐を買うことに時間を費やしていたのである。

 

2日目は足を伸ばしてベレンに行くことにしていた。ただ、旅初日の重たいベビーカーとの格闘を、もう一日繰り広げる気持ちにはなれない。ベビーカーにはホテルで休んでもらい、帯状の柔らかい布製抱っこ紐を購入したのは正解だったと思う。折りたためるし軽いし、体に巻きつけるのも簡単。コナツを体に密着させて歩くので安心感もある。かわりに朝食はショッピングモールのフードコートで食べることになったものだから、ナツさんは不満げで、もっと美味しい店を探すべきだと主張していた。ところが注文したファーストフードのハンバーガーは、想像以上に野菜がみずみずしく肉もジューシー。結果、何も言わなくなった。

 

ポルトガルの人々の日常の一場面が、このショッピングモールにはあった。みな思い思いに買い物している。でもこの食材のみずみずしさは、日本の都会のショッピングモールでは望めないんじゃないだろうか。都会にいてもこれほど新鮮な野菜や美味しい肉を毎日食べれるのかと、羨ましくなった。

 

魚介類の魅惑ー初日の夕食反芻

肉もいいけれど、ポルトガルの大きな魅力のひとつは、魚介料理が本当に美味しいことだろう。日本人の口に合うと聞いていたけれど、初日の夕刻に食べた鯵の炭火焼や鱈のトマト風リゾットの味は今でもしっかりと覚えている。

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地元の人たちも通っている雰囲気の、友人が教えてくれた店だった。繁盛していて、相席もあり、気どらず和やかだった。

 

魚や米を思う存分ほおばれる喜び。オリーブオイルや檸檬やコリアンダーが、魚介や米にこんなにも合うのだという新鮮さ。和食とはたしかに違うのに、懐かしくもあり、発見もある。

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量もすごい。けれど材料の旨味が凝縮されていて、食べやすくて、ついつい食べてしまう。

 

「全部食べんのか、りっちゃん。」

 

すごい勢いで二、三人前はあろうかと思われる鍋リゾットを食べきろうとしている私にナツさんが呆然としていたけれど、スルーした。が、大きな鍋につめこまれたリゾットを食べ終えるころには、お腹はさすがにパンパンになり、デザートを食べるゆとりは残っていなかった。

 

魚介と温かいスープー2日目の昼食

ポルトガルに来るとどうやら食べすぎてしまう。そんな警告めいた自覚を押しのけながら、2日目の昼食も、魚介を食べようと決めていた。前菜のパンとチーズを控えめにしながら、ここでも、蛸のグリルだとか鱈のフライだとかを存分に食べる。

  

コナツには、店の人が塩分の少ない豆のスープを作ってくれた。小さな子どもの食事には気を使う。食堂というよりは、きちんとしたレストランといった雰囲気なのに、メニューにない料理を作ってくれるなんて、なんてありがたいんだろう。コナツの前に置かれたとろりとしたオリーブ色のスープを一口飲んでみると、優しい味が口の中いっぱいに広がった。旅の間、こうしたマニュアルにない気遣いに何度も出会った。温かくて、優しい。

 

昼ごはんを食べた後、時間がないからと「パステル・デ・ベレン」のエッグタルトをリストから外して、ようやくベレンに出発した。