そのひと、絶対味覚を持っているとは一言もいわない。けれど助けられるときがある。
スペイン料理店でパンを食べた時に出てくた、この乳白色のマヨネーズディップ。パンにつけて口に放りこむと、マヨネーズとはまるで違う味がする。「まるで違う」というのは味がよくなるという意味じゃない。何かが入っていることで、マヨネーズじゃなくなってしまうのだ。
私の目の前に座っている夫氏が、舌に集中して、謎の味を解明しようとしていた。といえばいかにもドラマチックだけど、じっさいには力を抜いて何気なく「あ、ニンニクだ」と呟いた。それと、レモンだそう。さわやかで、どこか大阪のたこ焼きのような気軽さがあって、ガツンとくるこの味……! マヨネーズを食べている気持ちにも、ニンニクを味わっている気分にもならない。
ニンニクは、いろんなモノに混ぜこみたくなる。混ぜるとたいてい、ニンニクが入っているのだとわかる。これまで味が格段に良くなることは感じても、味が別物になると思ったことはなかった。
食べたことのない黄金ディップを、パンにつけては口に運び、味わってはまた次、とたらふく食べてしまった。あとに出てきたメインの料理を食べられなくなるくらい。
「マヨネーズとにんにくとレモンを混ぜればできるよ。パセリを入れてもいい。」
これは夫氏の絶対味覚に感謝しつつ、我が家でも真似したい。
ふだんの食事には、マヨネーズはそれほど使わない。使うのはアボガドサーモン丼を食べる時ぐらいだろうか。でも、あまりに衝撃的な味。我が家で作ってみた。
用意したのは、マヨネーズにレモン汁、イタリアンパセリ、隠れた主役にんにく。
にんにくを刻み、(すりおろしてもいい。刻むかすりおろすかはお好みで。)マヨネーズ、にんにく、パセリ、レモン汁を小さな器に入れて、
混ぜ合わせれば、出来上がり。
シンプルだ。混ぜるだけなんだから。
味見してみる。お店と同じ味が再現できるか。
旨い。スペイン料理店とほぼおなじ味になった。スペイン料理店のものはおそらくマヨネーズから手作りなので、やっぱり風味が違う。それでも、自宅で手軽に作れる。これは収穫。
パンなしでばくばく。幸せ。つけて食べると、胸やけするんじゃないかと心配になるほどパンがすすむ。コロナの下ではなかなか招待できないけれど、来客時にもパンと一緒に出せて重宝している。
※2019年4月27日の記事を加筆、修正。